Stardustbakery星屑べーかりー

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No.5

くるくるまわって、ここはどこ?


「だーーー!! 何なのよ、ここは!!くるくる回ってばっかりじゃない!!」
アルアートの声が夢世界の夜空に響く。ここは、天の川橋。のはずだが、天の川橋の入り口に入った瞬間、不思議な力に吸い込まれてしまい、天の川橋とそっくりな夢世界にマニ、コルヴス、ぷらりお、アルアートの4人は迷い込んでしまった。ぷらりおの魔法の力で星屑の街に戻れないか、試してみたのだが・・
「出入り口がふさがってて、ぷらりの魔法の力が弾かれちゃうよぉ。この夢世界の奥まで行けば、手がかりがあるかもだけど・・。」
夢世界の出入り口がふさがってしまい、星屑の街にも戻れない。夢世界の奥を目指して4人は進んでいる。せっかく星を眺めるはずが夢世界の探索になってしまった。アルアートには、夢世界のこと。星屑の街のこと。星屑の欠片のこと。全部話した。
「面白そうじゃない!それでココに用事があったのね?ココなら書物の塔の本、全部把握してるだろうから、なんとしても説得させましょ!私も力になるわ。」
今の状況は良くないのだが、アルアートの笑顔や明るさを見ていると、普段の状況と変わらない気がしてしまう。理解を得られたこと、ココアットの説得に力を貸してくれるとのことで、マニはとても心強いと安心した。
あたりは水たまりで溢れている。雨は降っていない静かな空間だ。歩いていると、想いが形になった水が浮かぶ。水はコルヴスに襲い掛かってきた。
「ふっ!」
コルヴスは手持ちの羽ペンで暗闇の魔法を描き反撃した。マニもぷらりおと一緒に光の魔法で応戦する。
「わー!!ファンタジー!!」
アルアートが歓声を上げたその時、残りの水がアルアートにとびかかってくる。マニがアルアートの名前を言おうとしたその時。
「私もこういう世界!あこがれていたのよねえ!」
アルアートは、カバンの中から鍵を取り出し、水に投げつける。鍵が水に触れた瞬間、鍵が光りだし、水と一緒にはじけて消えた。辺りは、想いの気配が消え、静かになった。
「か、鍵が・・!!」
マニが思わず声に出すとアルアートは笑って言う。
「ふっふっふー!私の実家は魔法の鍵屋さん。訳ありB級鍵は魔力を込めて護身用に使っていいってお父さんから渡されているのよね。」
鍵をじゃらじゃらと音を立てながらアルアートは手に取ってみせる。
「その魔法の鍵も実家で作られたものなのか?」
コルヴスの質問に対して、アルアートは、渋い顔をして答える。
「うーん・・違うのよね!家に何故かあったらしいのよ。最初は展示してたんだけど、私この通り足が不自由だから動くために使いなさいって、使用許可もらって使ってるわけ。」
「アルアートさんのご実家が、鍵屋さんって初めて知りました・・。」
「あははは、魔法の鍵に乗り始めてから知った人が多いのよ。でも鍵共々知っていただけて光栄に思うわ。」
4人は気を取り直して、奥へ、奥へ、と進んでいく。歩くたびに水が浮かび上がったり、水辺の影響か魚が浮かんでいたりしたが、アルアートの鍵が飛び、マニ、ぷらりお、コルヴスも魔法で応戦したので、場慣れしている4人の敵ではなかった。夢の世界とはいえど、空腹に関しては現実とリンクしているので、早く出なければいけない。幸い、唐揚げ先生からのお菓子の差し入れがあり量も4人で食べるにはちょうどいい量だった。
「さっさと出るんだろ。そろそろ本気を出すか。」
「こ、コルヴスくん・・それ・・・。」
「栄養ドリンクだよね・・?」
コルヴスが口に何か加えているかと思って見てみれば、どこから取り出したのかわからない栄養ドリンクだった。すごく苦そうである。しかし、コルヴスは動じずそのまま飲み干してしまった。
「ごみはどうすればいいんだ・・?」
「夢世界とはいえポイ捨てはダメよ。ちゃんと帰ってごみ箱に捨てましょうね!」
アルアートはカバンから袋を取り出しお菓子のごみや栄養ドリンクの瓶を分別して捨てる。
「アルアートさんってマメなんだね。明るいけど・・・」
「そうよ?趣味は雑誌や新聞のスクラップ、付箋集めに・・・」
「誰も聞いてない。」
コルヴスが話を打ちとめ、更に進んでいく。行き止まりということは、ここが奥ということになる。アルアートは、大きな声で叫ぶ。
「はーやーくーここから出しなさーい!!!」
声は虚しく、夜空に響くだけかと思えば。どたんっ!空から大きなペンギンが降ってきた!そしてペンギンは喋る。
「ねえねえ、書物の塔がふさがっているんだよね・・時間あるんだよね・・さみしいからぼくたちと遊んでよ!」
ペンギンは、水の魔法を使って4人に襲い掛かってくる。
「ずいぶんと乱暴な遊びだな! お前を倒して現実の街に帰らせてもらうぞ!」
コルヴスが反撃をする。アルアートは魔法の鍵で空を飛び、ペンギンをかく乱させる。マニはコルヴスに加勢する。水がはじける、水をよける、水にあたってみるとすごく痛い。誰が何のために、マニたちを夢世界に誘ったのかは分からないが、ここから出なければ書物の塔に行くことが出来ない。ペンギンは大きいのであまり早く動くことはできないのが救いだった。もし早く動いていたら、子供の体力ではよけきれない。アルアートも魔法の鍵から落ちてしまえば動けなくなってしまう。そろそろ体力的に限界とマニが思ったその時だった。アルアートがペンギンを囲むように鍵を投げ始める。
「マニちゃん、ぷらりちゃん!コルヴス君!離れて!私のとっておきをお見舞いするわよ!」
赤い鍵、青い鍵、黄色い鍵・・さまざまな鍵がペンギンを囲む。そして、囲み終わったその時、光が鍵をつなぎ、魔法陣が生まれる。
「魔法の鍵が織りなす連弾!!くらいなさいっ!!」
虹色の光が大きな体のペンギンを包み、光とともにペンギンは消えてしまった。そして、想いに反応していた水や魚は消えていた。
「ふぅ、やったわね! 一か八かだったけど上手くいって良かったわ。あら?コルヴス君。膝に傷があるわね。救急箱あるけど・・・。」
「アルアートさん、夢世界の傷は回復の魔法が効くんです。」
ぷらりおにお願いして、コルヴスの膝に回復の魔法をかける。するとコルヴスの膝の痛みは消えた。
「どうしてばんそうこうとかいらないのかしら?」
「そうですね...見た目では傷に見えるんですけれど、夢世界で受けた攻撃は、体の痛みというより、精神の疲れにつながるんです。なので、攻撃を受け過ぎてしまうと意識を失ったりします。さっきお菓子をみんなで食べましたけど、お菓子には栄養があるので、美味しいという嬉しい気持ちで傷が治ったりもするんですよ。だから、お菓子があってラッキーでした。コルヴスくんの栄養ドリンクも良い例ですね。」
アルアートは、なるほど!とうなづき、救急箱をカバンにしまう。
「でも・・傷って目に見えたらつらいから、包帯とかで隠すことで楽になる事もあるかもね。今度一緒に行くときは救急箱の他に飴ちゃんとかお菓子も持っていくわね。教えてくれてありがと!」
話している間にぷらりおの準備が整い、3人は隣同士に並び、ぷらりおが魔法陣を描き始める。
「出口、分かったよ!これにて一件落着~!! マニの家にいったん送るよ!」
疲れていることもあり、光が温かく感じる。そして、意識が消えてる。
気付いたら4人は、マニの部屋にいた。無事に戻れたのである。
幸い、お母さんは買い出しに行っていたので、家には誰もいない状態だった。夢世界の冒険が入ってしまったので、休息をとるために今日は、もう休むことになった。アルアートがココアットに連絡を取ると、書物の塔は明日には開放されるとのこと。明日、書物の塔で待ち合わせすることになった。

「あの夢世界には星屑の欠片がなかった・・。どうして私たちはあの夢世界に行ったんだろう?」

マニは疑問に思ったが、考えているうちに疲れで眠りについてしまった。
小説,ぷらり、ね。 3244文字