log No.4 書物の塔へ 2024年3月3日(日) 「書物の塔ってどんなところだっけ?」「書物の塔はね、本がたくさんあるんだよ。図書館エリアといって、図書館として開放している場所もあるし、奥には星屑の街の歴史にまつわるすごい本が保管されている本の宝庫だって。」「書物の塔・・か。図書館エリアには一般民のボクらも入れるとして、ボクたちが見たいものは、図書館にある小説ではなく、歴史にまつわる本だろう? 見られるのだろうか。」ぷらりおが書物の塔について確認を取ると、マニは説明をする。その説明を聞いて、コルヴスは思っている事をつぶやく。書物の塔は、図書館エリアは、ごく普通の一般民でも入れるのだが、星屑の欠片についてや、星屑の街の歴史について書かれている本は書物の塔の奥に保管されている。「・・どうなんだろう。書物の塔には代々書物の番人に選ばれた人が見張りをしているって聞いたよ。奥の本を見るには、番人さんの許可が必要だと思う。」書物の塔には、本を見張るための番人がいる。マニは”星屑の街の案内”と書かれた本を取り出し、書物の塔のページを探す。あった!と一声上げると、そこには金髪でお団子結びをした女の子が写っている。名前の項目には、書物の番人ココアットと書かれている。「書物の番人ココアットか。話が通じる相手だといいんだが。」コルヴスもページをのぞき込む。ぷらりおもこんな人だったんだ!と目を丸くさせている。マニがページを見ながら説明する。「ココアットさんは、頭が良くて小さいころは体が弱かったけれど、体の弱さの原因を自分で調べて医学的に貢献したの。そしてお医者様と力を合わせて病気を治したんだって。それで書物の番人に選ばれたって書いてあるね。博学な人だから、話は聞いてくれると思うんだけど・・。」「どうだかな。頭がいいやつほど、自分の理論を持っていて、無視されることもあるんだぞ。交渉は慎重にしなくてはいけないな。」コルヴスはマニの説明を聞いて、少しばかり溜息をする。現実はそう甘くはないと一言付け加える。それをみたぷらりおは、口をはさむ。「コルヴス~!!やってみなきゃ分からないよ。何もしないままだったら、何もしないままって決まるけど、なにかしたら変わる未来もあるかもしれないよ?」「・・まぁ、そうだな。やってみてみなければ、分からない。か。ボクは居候の身だし、マニやぷらりおには助けてもらった恩がある。二人の方針に従うさ。」「それじゃあ、書物の塔に行こうか?」三人は家を出る。三人で出かけるのは初めてだ。マニとぷらりおのコンビはよく見かけるものの、コルヴスは周りの人から見れば、誰?と疑問に思うだろう。通り行く先で、この子はどうしたの?と実際に聞かれた。もし近所の人に聞かれた時は”遠い親戚のコルヴスくんです。事情があって家の預かりになっています。”と言うようにとマニのお母さんから言われていた。夢世界のことを話すわけにはいかないし、夢世界なんて誰が信じるだろう。一般民からすれば歴史の話でしかない。自分たちの身を守るための嘘として、親戚の子として預かっているということにしようという決まりになったのだ。書物の塔は、マニの家から北の方向だ。そんなに距離はないが、やっぱり遠足にはおやつが欲しいところだ。ぷらりおは隣にある洋菓子店プレルーナをじっと見ている。「おやつ、やっぱり欲しいよね?」マニは苦笑いをする。しかし洋菓子店プレルーナは行列ができていて入れそうにない。「残念だったな、ぷらり。おやつはお預けだな。」コルヴスがにやりと笑ったときのことである。洋菓子店プレルーナの周りをよく見ると。屋台のような、屋外に小さなお店がありそこにいる男性が手を振っているではないか。男性は唐揚げの被り物をしている。なぜ、洋菓子店の隣で唐揚げの被り物をしているのか。なぜ、自分たちに向けて手を振っているのか、頭の整理がつかなかった。コルヴスが通報するか?と言おうとしたその時。「君たちは!マニちゃんとぷらりお君だね?いつも洋菓子店プレルーナにご来店くださり、どうもありがとう!!君は・・風のうわさで聞く、コルヴス君だね?いやぁ、どうも初めまして!私は人呼んで唐揚げ先生!唐揚げを愛し、唐揚げのおいしい食べ方を研究している先生だよ!」「嘘だ・・。絶対、唐揚げを作るとか言いつつ、裏ではドーナッツを作ってるだろ・・。」明るい唐揚げ先生。ちょっと冷めているコルヴス。温度差が出来ており、マニはぽかんとしている。コルヴスの冷たい言葉に負けず、唐揚げ先生は言う。「何を言っているんだい?コルヴス君。大人は嘘をつかないんだよ。とまあ、見ての通り洋菓子店プレルーナはちょっと混んでいてね、今から並ぶと・・一時間ちょっとかかるね。」「い、一時間!?」ぷらりおは目を丸くしてびっくりした声で言う。一時間も待っていられないのだ。寄り道のつもりだったし、おやつはあきらめようとマニは目を向ける。「まあまあ待ちたまえ。お菓子をよく買ってくれるお礼があるんだよ。受け取っておくれ。」唐揚げ先生はおやつの詰まった袋をマニに渡すと”みんなには内緒にするんだぞ”と言い残し、煙玉をぽんと投げ、煙の中に消えて行ってしまった。「な、なんだったんだろう・・・。」「あ、やっぱりドーナッツが入ってる。あいつはドーナッツ先生に改名すべきではないか?」「うーん・・そういう問題じゃない気がするなぁ。」中身は美味しいドーナッツが入っていたし、いい人だったので、通報はやめるとして、三人は気を取り直し、書物の塔へ向かう。書物の塔は高くそびえ立っており、道に迷うことはなかった。書物の塔に着いたものの、何人かざわついているのが見える。扉を見ては去る人が多いため、3人も扉を見てみることにした。張り紙が貼ってある。「・・書物の塔、只今点検中です。一般の方の立ち入りを禁じます。書物の番人ココアット」「せ、整備中!?どうしよう・・。」書物の塔の中に入れないのだ。図書館エリアなら入れると思っていただけに、ショックが隠せない。全部立ち入り禁止。番人とも話せない。3人は落胆した顔をしていた。その時上から声が聞こえる。おてんばな少女の声が聞こえるではないか。上を眺めてみると、空飛ぶ鍵に乗った青い帽子、青いコートを羽織っている少女がいる。「おーい!! 詳しい話をするからちょっと、場所移動しようかー? あの辺なんかどう?」少女は、西の方を指さし飛んでいった。「ま、魔法使い?」「とりあえず行ってみるとするか。」3人は場所を変えてその少女の後を追う。追いついてベンチがある場所までたどり着くと、少女は着地し、にっこり笑ってみせる。空のような水色のポニーテール、紫色の瞳。ポシェットを身に着けている。「ごめんごめん!いきなり呼びつけちゃって。しかも空の上から。」「人を呼ぶときはもう少し慎重になってもらいたいものだな。」「ねえねえ、君たち!書物の塔に行きたいんでしょ?」「な、なんでそれを・・・」「なんでって?書物の塔の前に立ってるんだもん。みんな行きたい人の集いに決まってるでしょ?わっはっは!!」少女は豪快に笑って見せるが、これでは誰を呼んでも問題なかったのではないだろうか。「おっと!名前を言うのを忘れていたわね。私の名前はアルアート!ココアットとは幼馴染よ。だからココって呼んでるの!」「アルアート・・さん・・?もしかして!アステリズムのアルアートさんですか?」「アステリズム?星群か?」「そういう意味もあるけど、芸能事務所だよ~!!アステリズムは、アイドルや歌手がたくさん所属する芸能事務所なんだよ。」マニは慌てて説明を加える。アステリズムは、星群という意味を持つ芸能事務所。人気アイドルや歌手、芸能人と名前を1度でも聞いたことがある人は必ずいる大手の事務所だ。「ご名答。私はプリティアイドルのアルアートちゃんよ。でもこの通り・・」アルアートは自分の足を見せる。足は思ったように動かせないようだ。アルアートは、アステリズム所属のアイドルもとい芸能人だ。「ごめんごめん、こんなの見せちゃって。私はね、足が不自由だから魔法の鍵がないと自由に移動できないの。アステリズムとこのエリアを行き来できるのは、この子のおかげってわけ!」魔法の鍵は、魔法道具と呼ばれる魔力のこもった発明品のひとつである。誰が考えたのか、誰が作り出したのかは不明で、いつの間にか現代に広まって今に至る。アルアートの持つ魔法の鍵は、実家が鍵屋ということもあり、先祖代々伝わっているものだそうだ。「アルアートさんは、ココアットさんのことを知っているんですか?」「知ってるもなにも、幼馴染って言ったじゃない~!バリバリ知ってるわよ。点検中っていうのも嘘ね。ココったら自分に自信がなくなると、いっつもそうするのよ。だから・・ちょっと待ってね。」アルアートは、また道具を取り出す。星の光が出る。これは星屑の欠片ではなく”ほしつむぎ”と呼ばれる星屑の街で普及している携帯電話のようなものだ。「もしもし?ココ?アルアートだけど。あのねー!!書物の塔を利用したいやじうまさんがわっさわさいるわよ。そろそろ鍵を開ける事ね?は?もう少し時間が掛かるし、点検も兼ねているのは本当だから待ってほしい?だーー!!ご用事ありの人がいっぱいいるんだから、早くしてよね!!」・・アルアートの早口言葉が町中に響く。コルヴスがそっと、ココアットも苦労人だなと言ったが、アルアートの声にかき消されて誰も聞いていなかった。「ダメねえ、時間が掛かるって。じゃあさ!ご挨拶も兼ねて、天の川橋で少し星でも見ない? アステリズムから渡ってきたとき、すごくきれいだったわよ!」天の川橋は、この住宅街とアステリズムを結ぶ大きな橋だ。この橋がある空間は、常に星空が見えており、美しい景色を見ることが出来る橋でも有名だ。観光客にも人気の場所だ。書物の塔が点検中である以上、やる事もない。ココアットの幼馴染であるアルアートから話を聞くチャンスだと思い、3人は天の川橋でアルアートと一緒に星を眺めることにした。 小説,ぷらり、ね。 4170文字 ユーザ「星屑べーかりー」の投稿だけを見る (※時系列順で見る)この投稿と同じカテゴリに属する投稿:カテゴリ「小説」の投稿だけを見る (※時系列順で見る)カテゴリ「ぷらり、ね。」の投稿だけを見る (※時系列順で見る)この投稿日時に関連する投稿:2024年3月3日の投稿だけを見る (※時系列順で見る)2024年3月の投稿だけを見る (※時系列順で見る)2024年の投稿だけを見る (※時系列順で見る)全年3月3日の投稿をまとめて見る (※時系列順で見る)全年全月3日の投稿をまとめて見る (※時系列順で見る)この投稿に隣接する前後3件ずつをまとめて見るこの投稿を再編集または削除する « No.3 / No.5 »
「書物の塔ってどんなところだっけ?」
「書物の塔はね、本がたくさんあるんだよ。図書館エリアといって、図書館として開放している場所もあるし、奥には星屑の街の歴史にまつわるすごい本が保管されている本の宝庫だって。」
「書物の塔・・か。図書館エリアには一般民のボクらも入れるとして、ボクたちが見たいものは、図書館にある小説ではなく、歴史にまつわる本だろう? 見られるのだろうか。」
ぷらりおが書物の塔について確認を取ると、マニは説明をする。その説明を聞いて、コルヴスは思っている事をつぶやく。書物の塔は、図書館エリアは、ごく普通の一般民でも入れるのだが、星屑の欠片についてや、星屑の街の歴史について書かれている本は書物の塔の奥に保管されている。
「・・どうなんだろう。書物の塔には代々書物の番人に選ばれた人が見張りをしているって聞いたよ。奥の本を見るには、番人さんの許可が必要だと思う。」
書物の塔には、本を見張るための番人がいる。マニは”星屑の街の案内”と書かれた本を取り出し、書物の塔のページを探す。あった!と一声上げると、そこには金髪でお団子結びをした女の子が写っている。名前の項目には、書物の番人ココアットと書かれている。
「書物の番人ココアットか。話が通じる相手だといいんだが。」
コルヴスもページをのぞき込む。ぷらりおもこんな人だったんだ!と目を丸くさせている。マニがページを見ながら説明する。
「ココアットさんは、頭が良くて小さいころは体が弱かったけれど、体の弱さの原因を自分で調べて医学的に貢献したの。そしてお医者様と力を合わせて病気を治したんだって。それで書物の番人に選ばれたって書いてあるね。博学な人だから、話は聞いてくれると思うんだけど・・。」
「どうだかな。頭がいいやつほど、自分の理論を持っていて、無視されることもあるんだぞ。交渉は慎重にしなくてはいけないな。」
コルヴスはマニの説明を聞いて、少しばかり溜息をする。現実はそう甘くはないと一言付け加える。それをみたぷらりおは、口をはさむ。
「コルヴス~!!やってみなきゃ分からないよ。何もしないままだったら、何もしないままって決まるけど、なにかしたら変わる未来もあるかもしれないよ?」
「・・まぁ、そうだな。やってみてみなければ、分からない。か。ボクは居候の身だし、マニやぷらりおには助けてもらった恩がある。二人の方針に従うさ。」
「それじゃあ、書物の塔に行こうか?」
三人は家を出る。三人で出かけるのは初めてだ。マニとぷらりおのコンビはよく見かけるものの、コルヴスは周りの人から見れば、誰?と疑問に思うだろう。通り行く先で、この子はどうしたの?と実際に聞かれた。もし近所の人に聞かれた時は”遠い親戚のコルヴスくんです。事情があって家の預かりになっています。”と言うようにとマニのお母さんから言われていた。夢世界のことを話すわけにはいかないし、夢世界なんて誰が信じるだろう。一般民からすれば歴史の話でしかない。自分たちの身を守るための嘘として、親戚の子として預かっているということにしようという決まりになったのだ。
書物の塔は、マニの家から北の方向だ。そんなに距離はないが、やっぱり遠足にはおやつが欲しいところだ。ぷらりおは隣にある洋菓子店プレルーナをじっと見ている。
「おやつ、やっぱり欲しいよね?」
マニは苦笑いをする。しかし洋菓子店プレルーナは行列ができていて入れそうにない。
「残念だったな、ぷらり。おやつはお預けだな。」
コルヴスがにやりと笑ったときのことである。洋菓子店プレルーナの周りをよく見ると。屋台のような、屋外に小さなお店がありそこにいる男性が手を振っているではないか。男性は唐揚げの被り物をしている。なぜ、洋菓子店の隣で唐揚げの被り物をしているのか。なぜ、自分たちに向けて手を振っているのか、頭の整理がつかなかった。コルヴスが通報するか?と言おうとしたその時。
「君たちは!マニちゃんとぷらりお君だね?いつも洋菓子店プレルーナにご来店くださり、どうもありがとう!!君は・・風のうわさで聞く、コルヴス君だね?いやぁ、どうも初めまして!私は人呼んで唐揚げ先生!唐揚げを愛し、唐揚げのおいしい食べ方を研究している先生だよ!」
「嘘だ・・。絶対、唐揚げを作るとか言いつつ、裏ではドーナッツを作ってるだろ・・。」
明るい唐揚げ先生。ちょっと冷めているコルヴス。温度差が出来ており、マニはぽかんとしている。コルヴスの冷たい言葉に負けず、唐揚げ先生は言う。
「何を言っているんだい?コルヴス君。大人は嘘をつかないんだよ。とまあ、見ての通り洋菓子店プレルーナはちょっと混んでいてね、今から並ぶと・・一時間ちょっとかかるね。」
「い、一時間!?」
ぷらりおは目を丸くしてびっくりした声で言う。一時間も待っていられないのだ。寄り道のつもりだったし、おやつはあきらめようとマニは目を向ける。
「まあまあ待ちたまえ。お菓子をよく買ってくれるお礼があるんだよ。受け取っておくれ。」
唐揚げ先生はおやつの詰まった袋をマニに渡すと”みんなには内緒にするんだぞ”と言い残し、煙玉をぽんと投げ、煙の中に消えて行ってしまった。
「な、なんだったんだろう・・・。」
「あ、やっぱりドーナッツが入ってる。あいつはドーナッツ先生に改名すべきではないか?」
「うーん・・そういう問題じゃない気がするなぁ。」
中身は美味しいドーナッツが入っていたし、いい人だったので、通報はやめるとして、三人は気を取り直し、書物の塔へ向かう。書物の塔は高くそびえ立っており、道に迷うことはなかった。
書物の塔に着いたものの、何人かざわついているのが見える。扉を見ては去る人が多いため、3人も扉を見てみることにした。張り紙が貼ってある。
「・・書物の塔、只今点検中です。一般の方の立ち入りを禁じます。書物の番人ココアット」
「せ、整備中!?どうしよう・・。」
書物の塔の中に入れないのだ。図書館エリアなら入れると思っていただけに、ショックが隠せない。全部立ち入り禁止。番人とも話せない。3人は落胆した顔をしていた。その時上から声が聞こえる。おてんばな少女の声が聞こえるではないか。上を眺めてみると、空飛ぶ鍵に乗った青い帽子、青いコートを羽織っている少女がいる。
「おーい!! 詳しい話をするからちょっと、場所移動しようかー? あの辺なんかどう?」
少女は、西の方を指さし飛んでいった。
「ま、魔法使い?」
「とりあえず行ってみるとするか。」
3人は場所を変えてその少女の後を追う。追いついてベンチがある場所までたどり着くと、少女は着地し、にっこり笑ってみせる。空のような水色のポニーテール、紫色の瞳。ポシェットを身に着けている。
「ごめんごめん!いきなり呼びつけちゃって。しかも空の上から。」
「人を呼ぶときはもう少し慎重になってもらいたいものだな。」
「ねえねえ、君たち!書物の塔に行きたいんでしょ?」
「な、なんでそれを・・・」
「なんでって?書物の塔の前に立ってるんだもん。みんな行きたい人の集いに決まってるでしょ?わっはっは!!」
少女は豪快に笑って見せるが、これでは誰を呼んでも問題なかったのではないだろうか。
「おっと!名前を言うのを忘れていたわね。私の名前はアルアート!ココアットとは幼馴染よ。だからココって呼んでるの!」
「アルアート・・さん・・?もしかして!アステリズムのアルアートさんですか?」
「アステリズム?星群か?」
「そういう意味もあるけど、芸能事務所だよ~!!アステリズムは、アイドルや歌手がたくさん所属する芸能事務所なんだよ。」
マニは慌てて説明を加える。アステリズムは、星群という意味を持つ芸能事務所。人気アイドルや歌手、芸能人と名前を1度でも聞いたことがある人は必ずいる大手の事務所だ。
「ご名答。私はプリティアイドルのアルアートちゃんよ。でもこの通り・・」
アルアートは自分の足を見せる。足は思ったように動かせないようだ。アルアートは、アステリズム所属のアイドルもとい芸能人だ。
「ごめんごめん、こんなの見せちゃって。私はね、足が不自由だから魔法の鍵がないと自由に移動できないの。アステリズムとこのエリアを行き来できるのは、この子のおかげってわけ!」
魔法の鍵は、魔法道具と呼ばれる魔力のこもった発明品のひとつである。誰が考えたのか、誰が作り出したのかは不明で、いつの間にか現代に広まって今に至る。アルアートの持つ魔法の鍵は、実家が鍵屋ということもあり、先祖代々伝わっているものだそうだ。
「アルアートさんは、ココアットさんのことを知っているんですか?」
「知ってるもなにも、幼馴染って言ったじゃない~!バリバリ知ってるわよ。点検中っていうのも嘘ね。ココったら自分に自信がなくなると、いっつもそうするのよ。だから・・ちょっと待ってね。」
アルアートは、また道具を取り出す。星の光が出る。これは星屑の欠片ではなく”ほしつむぎ”と呼ばれる星屑の街で普及している携帯電話のようなものだ。
「もしもし?ココ?アルアートだけど。あのねー!!書物の塔を利用したいやじうまさんがわっさわさいるわよ。そろそろ鍵を開ける事ね?は?もう少し時間が掛かるし、点検も兼ねているのは本当だから待ってほしい?だーー!!ご用事ありの人がいっぱいいるんだから、早くしてよね!!」
・・アルアートの早口言葉が町中に響く。コルヴスがそっと、ココアットも苦労人だなと言ったが、アルアートの声にかき消されて誰も聞いていなかった。
「ダメねえ、時間が掛かるって。じゃあさ!ご挨拶も兼ねて、天の川橋で少し星でも見ない? アステリズムから渡ってきたとき、すごくきれいだったわよ!」
天の川橋は、この住宅街とアステリズムを結ぶ大きな橋だ。この橋がある空間は、常に星空が見えており、美しい景色を見ることが出来る橋でも有名だ。観光客にも人気の場所だ。書物の塔が点検中である以上、やる事もない。ココアットの幼馴染であるアルアートから話を聞くチャンスだと思い、3人は天の川橋でアルアートと一緒に星を眺めることにした。