Stardustbakery星屑べーかりー

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No.6

ひらけ!書物の塔


マニとコルヴス、そしてぷらりおは書物の塔の前に立っている。空からアルアートが魔法の鍵に乗ってやってきて全員集合。
「コ~コ~・・!!書物の塔ずっと閉めてたの許さないんだから!私がシメてやるわ!」
「今日開いたばかりということは、たくさん人が集まる可能性があるな。さっさとココアットに会いに行くとするか。」
「それは大丈夫。ココに会えるのは私たちが先客で、あとの人は図書館を使う人でいっぱいだから。」
アルアートのお調子者な発言は風と共に流れていった。今回書物の塔に行くための目的。図書館エリアより奥にある本を読むために書物の番人ココアットの許可を取りに来たのである。
「開け!ゴーマー!!」
アルアートが掛け声を開け、扉を開ける。扉はゆっくりと開き足を踏み入れる。青い壁、青い床、水路もあり、まるで海の中に入ったかのような空間が広がっていた。
天井を眺めると、魚の光が泳いでいる。
「きれい・・!」
「書物の塔は初めてかしら? 中々きれいな建物よね。」
アルアートが書物の塔の高い天井まで魔法の鍵で飛んでみせる。
すると、奥の階段から足音が聞こえてくる。
金髪のお団子結び、紫色の衣服を着た少女がこちらまでやってくる。青い瞳がこちらを冷たい目線で見つめている。
「・・アル。ちょっとは静かにしてよ。」
「あ、ごめん。はしゃぎすぎた。」
その場の空気が気まずくなる。
「すみません。場所を変えましょう。」
少女が奥に案内する。階段を上った先には番人の部屋があった。少女は椅子に腰をかける。椅子に腰をかけたことで、番人ココアットは彼女なのだと三人は確信した。アルアートは、むすっとしていてこちらを見ようとしない。
「御用があるのは、あなたたちですね。書物の番人、ココアットは確かにぼくです。さて、お忙しい中、来て頂き恐縮ですが。」
「ぼくのお団子結びとかそういうのが珍しくていらしたなら帰ってもらいますよ。」
「違うわよ!マニちゃんもコルヴスくんもぷらりちゃんも!星屑の街がおかしなことになっててその原因を調べるために、ココや書物の塔にある本が見たくてきたの!そんな理由じゃないわよ、ばか!」
マニはアルアートを止めるように喋りだす。
「ココアットさん、初めまして。私、マニです。最近、星屑の街の表現者たちが暗い気持ちや悩みを抱えている事案が増えていることはご存知でしょうか?」
「ええ、知っています。でもぼくに出来る事は何もないでしょう。ぼくはカウンセラーではないし、お医者さんでもありません。」
「・・星屑の欠片が散り散りになったことで、街を守っている結界がなくなったために起きている事、といってもお前に出来る事はないのか?」
「・・!?どういう、ことですか・・・。」
ココアットは目を丸くする。そして相棒とみられるくまのぬいぐるみをぎゅっと握っている。
「確かにここ最近の星屑の街は異常でした。表現者の悩みもそうですが・・表現者を応援する方々のことを応援者と呼びますよね。応援者の行動もちょっと引っかかるものがあるのです。応援者が表現者との距離感が取れない事で、警備員の仕事が急激に増えたりしているとも聞いています。今までそんなこと一度もなかったのに。」
「それも結界がないから・・だと思う。でもね。ぷらりたちの知識だけじゃよくわからないの。ぷらりは夢世界にみんなを連れていくことが出来るけれど、自分たちだと何もわからない。だから助けて!って言ってるの。」
ぷらりおは、ココアットの抱いているくまのぬいぐるみをつんつんと当てながら喋る。
「夢世界に仲間を誘う妖精がいるのですね。分かりました。みなさんのお話を信じましょう。アルも冷たい態度を取ってごめんね。」
「ううん、いいの。私も怒り過ぎたわ。」
「さあ、タイニー!!」
ココアットの抱いていたくまのぬいぐるみ”タイニー”はココアットの声に応じて大きくなる。大きさで言えば、ココアットがちょうど乗れるくらいだ。大きくなったタイニーは、天井をボタンを押すような力で叩いてみせる。すると、天井に大きな壁が開く。星型の穴がいくつも開いているではないか。プラネタリウムのようにも見える美しい光景だが、この穴は見覚えがある。
「・・星屑の・・欠片が入りそう。」
「ええ、この壁は、星屑の欠片をはめるようにできています。結界も書物の塔を拠点に作っていたものですから、ぼくも違和感があったのは気付きました。そしてマニちゃん、あなたは星屑の欠片をお持ちですね?ふしぎなエネルギーを感じます。」
ココアットが言うと、マニが持っていた星屑の欠片がひかりだし、天井へ昇っていく。星屑の欠片はがっちりとはまり、離れようとしない。そして優しく光りだした。
「ここが本来の星屑の欠片の場所なんだね。なんだかうれしそう。」
「星屑の欠片が一つ増えるたびにここに来たほうがいいのか?だとしたら手間だな。」
「いえ、それは大丈夫でしょう。星屑の欠片が二つあるのでその欠片を道しるべに他の欠片も戻ってくることが出来るはず。ただ、夢世界にある場合、帰り道が複雑に入り組んでいるので、自分たちで探す必要があります。」
「それならだいじょーぶよ!マニちゃんとコルヴス君とぷらりちゃんは夢世界を冒険できるんだから!この二つの欠片もマニちゃんたちが見つけたんだもの。」
「ほ、本当ですか・・。ぼくもここに留まって本ばかり読んでもダメですね。本は歴史を教えてくれるけれど、今のことは教えてくれない。今ばかりは自分で足を運んで見に行かなくては。」
ココアットは、タイニーの名前を呼ぶ。タイニーはみるみる元通りの大きさに戻り、天井の扉もしまった。
「改めまして・・書物の番人ココアットです。マニちゃんコルヴスくん、ぷらりおくん、ぼくでよければ力を貸しましょう。魔法の知識があるので、お役に立てるように頑張ります。宜しくお願いします。」
ココアットが一礼すると、ぷらりおはココアットの頭をなでた。
「ぷらりおだよ、よろしくね。タイニーもよろしくね。」
「マニです!ココアットさんが力を貸してくれるなんて嬉しい!宜しくお願いします。」
「コルヴスだ。ところで・・」
「お前は、男だよな?」
コルヴスの一言に対してマニとぷらりおは、ぽかんとする。
「え、そ、そうなんですか?ココアットさん!?」
「は、はい・・。このお団子結びはアルが小さいころにしてくれたものを自分でもそのまま続けてしているもので・・。その影響で女の子だと間違えられるのですが、男です・・。あはは・・。」
「ええーーーーーーー!!!!」
書物の塔に今までにない大きな声が響いた。
「星屑の街の歴史・・もそうなのですが、劇団アリエスやアステリズムは表現者がたくさんいます。異変がないのか気になりますね。アルは何も聞いてない?」
「アステリズムは特にないわよ。」
「そうか・・。ぼくの用事に付き合わせて悪いのですが、劇団アリエスの方に脚本を届けなければいけないのです。もし宜しければ様子を見に行くのも兼ねて、お付き合い頂けないでしょうか?」
「分かりました。行ってみましょう。・・私たちは入れるかな?」
「それなら大丈夫です。ぼくが同伴しているならば、関係者として入れて頂けるはずです。」
「ありがとうございます!」
「それでは明日書物の塔の1階で待ち合わせをお願いしてもいいでしょうか?お弁当も準備したほうがいいでしょうか?お菓子も必要ですか!?」
ココアットは、嬉しそうに喋る。
「なんか急に目が輝きだしたな。」
「ココは、番人になってからあまり外に出られなかったのよ。だからすごく嬉しくなるとああなるのよ・・。」
ココアットと待ち合わせの約束をした後、書物の塔の一階に戻る。すると、入り口付近にアルアートのことをじっとみる青年がいる。夜空のような藍色の髪、月のような黄色い目。白いコートを羽織っている。
「や、やだ~!モテ期到来かしら?」
アルアートは言っていることとは真逆に冷や汗をかいている。青年がこちらに近寄ってくる。
「アルアート!やっと見つけた!」
「うげ・・ゼッくん~・・お疲れ様で~す・・・。」
「君たち、アルアートをみつけてくれたんだね。ありがとう。」
穏やかな声で青年は話しかける。マニは恋人なのかな?と感じたのだが、そんな感じでもない。
「お二人はどういったご関係で・・」
「ああ、ごめん。僕はアステリズム所属警備員のゼクス。おまわりさんみたいな感じかな。アルアートがずーっと外に出たままだから、探しに行くように頼まれて星屑の街をあちこち探していたんだ。」
ゼクスと名乗る青年はアステリズム所属の警備員。ということは、アルアートは抜け駆けをしていたのだ。つまり・・と考えるとマニとコルヴス、ぷらりおの目線はちょっと冷たい。
「わ、わーかったわよ!ちゃんと帰ります~!でも溜めていた事務仕事はちゃんと片づけてから抜けてきたわよ?」
「でも、アステリズムでも応援者との距離感厳重注意って注意喚起が出ていて危ないから、1人の外出は控えたほうがいいよ。じゃあ、アステリズムまでアルアートを送るよ。君たちどうもありがとう。」
「いえ・・。」
「見つかったからには仕方ないけど。マニちゃんコルヴス君、ぷらりちゃん。また一緒に冒険しましょうね!ぜったいよ!」
アルアートとゼクスはゆっくりと帰っていく。マニとコルヴス、ぷらりおも書物の塔から出た。もう夕焼け空になっていた。
「ココアットさんって男の人だったんだ・・」
「今日の収穫はそれでいいのか、マニ?」
「ち、違うよぉ。今まで女の人だと思ってたからびっくりしただけだよ。」
コルヴスは、ふーんと一息つくと、先にてくてくと歩いて行ってしまった。
マニとぷらりおも追いかけていく。
明日は、いよいよ劇団アリエスに向かうことになったけれど、関係者として入るのは初めて。わくわくするなぁ。
小説,ぷらり、ね。 4063文字