Stardustbakery星屑べーかりー

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No.8

迷いの色


「みんな、中に入ってもびっくりしないでね。」

メブキが扉に手をかけて、劇団アリエスに入る。
すると、真っ暗な空間が広がっており、黒い雲のようなものが浮かんでいる。

「・・なんなんですか・・ここは・・・」
「劇団アリエス。」
「わっ!わかってますって! どうしてこうなったのでしょう?」

青ざめた表情でココアットが言う。
メブキは険しそうな表情をしながら言葉を返す。

「この空間が広がる前、アヤセはものすごく追い詰めていた様子だったんだ。アヤセは画家の卵でね、劇団アリエスで使う背景画とか描いてる子なんだけど・・」

「そだ、みんなこれ持っといて。」

メブキがみんなに目薬とサングラスを渡す。

「あの、アヤセってさ、色に対してものすんごくこだわりが強い子なの。さっきアヤセを助けようと先に進もうとしたら、まぶしい光が広がったから、持っておいた方がいいかも。」

「メブキさんありがとうございます。」

マニたちはサングラスと目薬を受け取り、サングラスをかける。
ぷらりおがマニの手をつんつんと優しくたたいて言う。

「・・ここの気配、夢世界に似てるね。」
「うん。さっきまでは普通に劇団の中に入れたんだけど・・
 確かにここは、私が行きたいと思っていた空間だよ。」
「じゃあ、現実世界から夢世界に繋がった・・ということ・・?」
「ぷらりの予想だと、メブキさんがアヤセさんをたすけたーい!っていう気持ちが夢世界に繋がったんだと思う。」

その時、黒い雲がこちらに襲い掛かってきた!

「こっちはまだ話している途中なんだってば!!」

メブキは腰にかけていた大きな剣を取り出し黒い雲を追い払う。
黒い雲はあっという間に散り散りになり、消えていった。

「ふう、こんなのがうじゃうじゃいるから先に進めなくて。
 でも体の疲れは残るけど現実世界に戻っても
 ケガの傷は残らないんだよね。
 これも夢世界の影響ってやつかな?」
「はい。夢世界は心に負担のかかる不思議な世界なので・・
 おいしいものを食べたり、傷は隠すと気持ちが和らぎますね。」
「おいしいもの・・じゅるり。ささ、アヤセ助けよ!!こっちだよ!!」

メブキが駆けていく。
3人は何とかついていくが、ココアットが立ち止まってしまう。

「ぜえ・・ぜえ・・ま、待ってください。
 ぼ、ぼく走るの苦手で・・そ、そうだ。タイニー!!」

ココアットがタイニーの名前を呼ぶと、タイニーはどんどん大きくなる。
そしてココアットをおんぶできるくらいの大きさになった。
ココアットはタイニーに乗り、タイニーが走り出す。

「お、お前ずるいぞ!!」

コルヴスを追い抜きココアットは、メブキと並んだ。

「ココアットやるねえ! でもこの奥から要注意だよ。」

黒い雲、動く絵筆に布のおばけ。
ココアットは持っている本を開き、本の文章を唱え始める。

「いっけー!!」

ココアットが詠唱を終えると炎が舞い、襲い掛かる雲たちを囲う。
そして、ココアットの背後にまたひとつ、雲が現れる。
それをすかさずタイニーがパンチして追い払う。

「アルが楽しいって言ってたのも分かる気がす・・ぜーはー・・」

「ココアットさん、無理しないでください。」
「ぷらりたちにもお任せあれ!」

マニがパラソルを開き、ぷらりおが魔法をかけて優しい光を飛ばす。
動く絵筆は元の絵筆に戻っていく。
コルヴスも羽ペンで魔法陣を描き、自分の身を守っていた。

戦いながら、走り、全員が疲れ始めていた。

「あの、こんな場所でいうのもおかしいのですが・・おやつにしませんか?」

マニが洋菓子店プレルーナで買ったお菓子を取り出す。

「わあ!ありがとう!これ洋菓子店プレルーナのお菓子でしょ!?おしゃれだねえ。腹が減っては戦はできぬって言うしお言葉に甘えていただくね。」

お腹はすくし、疲れ始めてもいる。そんな中、甘いお菓子が出たらほおばってしまう。あっという間にお菓子はなくなり、全員元気を取り戻した。

複雑な迷路のような空間が広がっている。
行き止まりにあたったり、動くイーゼルから逃げたり。
なんとか、扉の前までたどり着けたが。

メブキは何かを感じ取ったかのように言う。

「・・なんかね、なんとなくだけど。
 あの扉の奥にアヤセがいる気がするの。」

―奥の空間。

耳の下で結んでいるツインテールの少女がいる。
髪の色は淡い黄色で、結ばれている耳の下の毛は片方ずつ赤、青で染まっている。

少女は自分に語りかけるかのように言う。

「・・私の色は、私が見つけた色。」

「だれにも・・奪われたくない。」

暗闇はささやく。

「空の塗り方綺麗だよね、どうやって色混ぜてるの?」

「草原の緑は?」
「夕焼けの色は?」

笑いかける暗闇に対して少女は叫ぶ。

「誰の色でもない。私の世界。」

「それを教えることなんてない。」

「・・色は自分で作るの!!」

少女は持っている筆で色を作り
暗闇にやみくもに投げつける。

「あー!!うるさい!うるさい!うるさい!!」

筆からあちこちに色が投げつけられる。
その色はどこか濁っている。

「夜空の青は?」
「紫は?」
「黄色は?」

暗闇はそんな色に動じず、語りかける。

「うるさい!黙れ!!」

感情的な叫びが響く。

「虹色は?虹色はどうやって作るの?」

「・・・・・・・・・・・。」
「さっきからうっさいのよ!!」

暗闇のばかにするような語りかけに
少女も耐えられなくなっていた。

「色しか作れない画家!!!」
「人物が描けないから背景しか描かない!!」
「1つしか描けないなら画家じゃないよ!」

少女は唇をかみ、怒り交じりに叫んだ。

「・・色を馬鹿にしたわね!」
「あんたらまとめて塗りつぶす!!!」

少女が筆を構えなおした瞬間。
扉が開く。

「アヤセ!!助けに来たよ!!!」

メブキがアヤセの前に立つ。

「だいじょうぶですか・・?」

マニたちもアヤセを囲むように立つ。
アヤセは驚きを隠せない。

「!? め、メブキ・・? あ、あと知らない人。」

「この空間、雑音が聴こえる。ひどい雑音だ。」
「色について尋ねてくるゴミの音。
 背景画家として迷っている、迷いの音が聴こえるな。」

コルヴスは耳につけているヘッドホンに手を当てる。
アヤセは焦り始める。

「そ、そんなこと・・ない。」
「アヤセ・・?」
「そんなことないってば!!!」

暗闇が集まり、大きな闇が広がっていく。

「みなさん!! 気を付けてください!!」
ココアットが構える。

闇の中から三原色のまぶしい光が飛び出してくる。
メブキはアヤセをかばう。

「メ、ブキ・・」
「だいじょぶ!」
「アヤセのその迷い!断ち切って見せる!」

メブキが剣をふり、タイニーが暴れだす。
ココアットが炎の魔法で加勢する。
マニとぷらりおも光の魔法を放つ。
しかし、魔法は闇の中に吸い込まれていく。

「・・魔法が効かない・・!?」
「じゃあ叩き切るまで!!!」

メブキが走り、剣を地面に刺す。

「大地の力よ、芽吹け!!!」

剣が刺さったところから岩が飛び出て、闇を襲う。
大きな闇はいくつかの小さい闇に分かれていった。

「ぼくたちも加勢します! タイニーお願いします!」

タイニーの大きくなった手で小さい闇を叩いていく。
小さくなった闇は今度は動きが素早い。

「うう・・困ったなあ。」
「そこの金髪!下がりなさい!!」

アヤセがココアットの前に出ると筆を構えなおす。

「さっきは・・・よくも私を馬鹿にしたわね!!
 その濁った色、塗りつぶす!!」

両手に筆を握り、舞を舞うように
アヤセが動くと虹のような光が現れ始める。

「極彩色!!」

アヤセの声に合わせて、色が闇を押しつぶす。
闇の気配はなくなった。

「・・・・・・ぐすっ。」
「うわああああああん!!」

その途端、アヤセはうつむいて、大きな声で泣き始めてしまった。

「アヤセ・・」
メブキがそっとアヤセを抱き寄せる。

「私、迷ってた!背景しか描けなくて!!
 色の事は分かってるのに、上手く使ってあげられなくて!」

アヤセもメブキをぎゅっと抱きしめる。

「そうよ、私はデッサンは得意じゃない。
だから色で作れる空を描いてた!!逃げてたのよ!!
逃げた結果、こんな空間に閉じ込められた!!」

メブキがアヤセの頭をそっとなでる。

「・・でも、私はアヤセの描く空が好き。
劇なら人は役者さんが立ってくれる。
アヤセの世界は・・劇団の支えなんだよ。」

「色が好きなアヤセも。
デッサンの人形とにらめっこしてるアヤセも。
私はどっちも知ってるよ。
アヤセは絵から逃げてない。」

アヤセはうなづくように頭を動かす。

「ぐずっ・・うっ・・」

「アヤセ、アヤセは話してくれたよね。
 私の名前の由来は・・」

「色とりどりの世界・・」

「そう!だからアヤセ、みんなで帰ってもう1度色んな色を見よう?」

「う、うん・・!!」

少しずつアヤセが明るい表情を取り戻していく。
マニたちはほっとした。

「よかった・・」

すると、空間の天井に星の形をした欠片が浮かんでいる。

「あれ?・・もしかして・・欠片?」
「ああ、聴こえる。あれも星屑の欠片だな。欠片も迷っていたようだ。」

「おいで。」
マニが欠片に手を差し伸べると、欠片はマニの手に乗った。

「迷っていて、さみしかったよね。」
「もう、大丈夫。書物の塔にあなたの仲間がいるからね。」

マニが優しく話しかけると、欠片もうなづくように動いた。

「みんな、かえろ。欠片が見つかって劇団アリエス、元通りだよ!」

「・・私のせいで。なんてことしちゃったのかしら。」

「まあまあ、元に戻ったんだしさ、いいじゃん!
 ぷらりお、元の世界までお願いね!」

「りょーかい! ぷらりまじっく! 劇団アリエスにみんなでかーえろ!」

ぷらりおが手をぱん!と叩くと優しい光があらわれ全員を囲む。

そしてまぶしさのあまり目を開けられなくなり、目を瞑る。

目を開けたら、そこは、本物の劇団アリエス。
周りの劇団員たちは何があったか覚えていないようだ。

ココアットは、ふう・・と一息つくと。
「今までの出来事、全て劇団アリエス、アステリズムに伝えました。」

全員が目を丸くする。
あの短い時間で劇団アリエスとアステリズムに報告したというのだから。

「ぼくの羽ペンは不思議な羽ペンでして
 頭の中に描いた言葉の伝達が出来るようになっているんです。
 これで少しでもお役に立てればよいのですが。」

「ありがと!!ココアット君助かるね!」

「い、いえ出来ることをしただけですよ!
今後の事も考えて何が起きたか皆で共有しましょう。」

ココアットはマニのほうを見て、不思議な光を出す。

「あと、マニさん。
ぷらりおくんが夢世界を開く鍵なら連絡手段はあった方が良いですよね。
ぼくの持ってるほしつむぎを1つ渡しますね。」
「いいんですか・・?
ほしつむぎは、連絡したい時だけあらわれる星の光。
・・光が言葉や音を受信するエネルギー・・」
「もちろん!マニさんたちのおかげでぼく自信つきましたから!
ふたつ持っていますし、お礼にプレゼントしますね。」
「ありがとうございます・・!!」

マニとぷらりおはほしつむぎの光を見て微笑んでいる。
コルヴスはマニに聞こえない声量でココアットに言う。
「病み上がりの無茶な冒険はもうするなよ。」
「あはは・・ばれちゃいましたか!
 ちょっと具合悪くなっちゃってて。」
「ああ、そうしてくれ。呼吸の音がおかしかったぞ。・・ありがとな。」
「ふふ、どういたしまして。」

ココアットは振り返って言う。
「すみません、そろそろぼくは書物の塔に戻ります。
そして、メブキさんこちらが台本です。
ティフィーさんによろしくお伝えください。」

「ありがと、ココアット!
私から伝えておくね!それじゃまた!」

「はい。マニさん、コルヴスくん、ぷらりおくん。メブキさん。
 また冒険出来たらうれしいです。
 それではまた!」

ココアットが劇団アリエスを後にする。
すると陽気な声が聞こえてくる。

「あ、ココー!こんちは!!
 えー!もう帰るの?つまんなーい!
 また来てよね!」

陽気な足音がこちらのほうに近づいてくる。
はねた茶髪のわんぱくな少年が走ってくる。

「んん???メブキお姉ちゃんとアヤセだ!やっと戻ってきた!」
小説,ぷらり、ね。 5188文字